カマイホームセンター

    作者:空白革命

    ●田舎の男はホームセンター大好き
     ホームセンター。そこは男たちの楽園。
     工具に農具、ネジや釘は勿論木材は数センチから数メートルまで取りそろえ、場所によっちゃ肥料や農薬まで扱っている。
     軽く見て歩くだけでも楽しいので、あるおっさんもホームセンター大好きおじさんだった。
     好きすぎて全国のホームセンターを全て見て回る旅に出ちゃうくらいだった。
     そのせいで家族やら仕事やら毛根やらとホームセンター以外の全てを失った気がするけどおっさんは幸せだった。
     そんなおっさんがふらりとやってきたのが、山中に建てられたという幻のホームセンターである。
     なんでも店主が大博打をうって建てたはいいが客が入らなさすぎて大惨事になっているというのがホームセンターマニアたちの噂である。今経営しているのか潰れているのかすらわからないので、おっさんは一人登山リュック背負って突入することにしたのだ。
    「ふむ……」
     思ったより大きな建物だ。中に入ってみるとホームセンター独特の、やたら背の高い棚群が出迎えた。ある程度ゆとりを持ちたかったのか棚どうしのスペースはやや大きめだ。
     ハンマーやバールといった工具類は普通に置いてあるのでやってるのかなと思ったが、全ての商品が軽く傷んでいる。
     どころか店内はホコリとさびの臭いに満ちていた。
    「どうやらここは廃墟化しているらしい。売れ残った商品は引取先もなく放置されたか……立地のせいで荒らされずに済んだようだが」
     じゃあ今日はここで人生のビバークかなと軽く可哀想なことを考えていると、どこかで物音がした。
     棚の裏だ。もしや先住民の方が!?
     おそるおそる覗き込むと……。
    「キキー!」
     イタチを大きくしたような化け物が飛び出してきたではないか!
     おっさんは慌てて近くのスコップを翳すが、あわれスコップは真っ二つに切断されてしまった。
     よく見るとイタチの両手が鉈の形になっている。
     なんてところに訪れてしまったのだ。おっさんがあわあわしていると、四方八方から別の化け物が這い出てくる。
     腕がノコギリになったものやバールになったものとさまざまだが、みな一様に殺気むんむんだった。
    「お、おたすけー!」
     おっさんは真っ二つになったスコップを投げ捨て、一目散に逃げ出した。
     このホームセンターこそ、眷属鎌鼬のすみかとなってしまった建物……別名カマイホームセンターだったのである。
     

     ねじりはちまきをした親方風のエクスブレインが、畳の上であぐらをかいていた。ちなみにあだ名は学級親方。
    「鎌鼬タイプの眷属がすみかとしている建物を見つけた。被害が出る前に、無力化せねばならん」
     親方が言うには、山中に破棄されたホームセンターに眷属が住み着いているらしい。
     ここでいう眷属というのはダークネスの作る配下モンスターのことで、鎌鼬というのはその一種である。腕が刃物になったイタチ型モンスターだが、今回はマイナーチェンジ版のようだ。

    「屋内は背の高い棚やそのまま廃棄された電化製品などが放置され非常に視界が悪くなっている。突入予定時間は日中になっとるし、窓からはいる光で充分明度はとれるから致命的な問題ではないんだが、物陰から飛び出す敵には注意してくれい。何なら障害物ごと破壊してもかまわん」
     出てくる眷属はお察しの通り鎌鼬のマイナーチェンジタイプである。通常よりちょっと小柄で腕のエモノが工具になっている。その代わり攻撃範囲が狭まっているようだ。
    「まあ色々言ったが相手は眷属だ。気楽にやってくれい!」


    参加者
    黒白・黒白(アルビノデビル・d00593)
    水軌・織玻(水檻の翅・d02492)
    城・漣香(焔心リプルス・d03598)
    安藤・燐花(藍色丁香花・d17984)
    倉丈・姫月(白兎の騎士・d24431)
    フィオル・ファミオール(蒼空に響く双曲を奏でる・d27116)
    翌檜・夜姫(羅漢柏のミコ・d29432)
    頸旗・歌護女(人離語リ・d33259)

    ■リプレイ

    ●日本の場合ホームセンターはゾンビに対して安地じゃないそうで
     長い山道を荷物かついで歩く影。計八つ。
     黒白・黒白(アルビノデビル・d00593)は振り返って木と空と山ばっかりの景色を見やった。
    「これは流行らない……流行らないっすね」
    「戦いの舞台としては悪くないんじゃがの」
     横を抜かしていく倉丈・姫月(白兎の騎士・d24431)。
    「もっと利用しやすい所に立てれば潰れなかったのにねー」
     同じくフィオル・ファミオール(蒼空に響く双曲を奏でる・d27116)。
     二人は立ち止まり、額に手を翳して例の建物を眺めた。
     元ホームセンター。現鎌鼬のすみか。仮称、カマイホームセンターである。
     ホームセンターに住んで、カマも工具に取り替えたモンスターだというが……。
    「人も色々、鎌鼬も色々だね……」
     翌檜・夜姫(羅漢柏のミコ・d29432)は腕組みし、小さく首を傾げた。

     すとんと荷物を下ろす八人。
     彼らの眼前にはそこそこ大きなホームセンターが静かに鎮座している。
     頸旗・歌護女(人離語リ・d33259)はさした番傘を半回転だけさせると、日陰から建物を見やった。
     外観からは廃墟らしさはなく、破壊された跡もない。ここまで綺麗な廃墟も珍しいものである。
    「思ったより綺麗だな。窓ガラスとか全ぶっぱだと思ってたもんよ」
     城・漣香(焔心リプルス・d03598)は背伸びをして軽く身体を反らした。準備運動、というよりリラックスの一環だろうか。
     まねをしてか、肩をぐりぐりと回す安藤・燐花(藍色丁香花・d17984)。
    「中は結構痛んでるみたいだけどね。ボクらはゲーム感覚で行けるけど、普通の人はつらいだろうね」
    「普通の人かあ……」
     しみじみとした顔の水軌・織玻(水檻の翅・d02492)。
     ホームセンター大好きおじさんのことをふと思い出した。
     職も家族も毛根も失ったそうだが、なにも命まで失うこたぁあるまいて。
    「それじゃ、がんばろっか――豆大福っ」
     カードを取り出す織玻。と同時に、彼女の肩にちょこんとしろちっこい霊犬が飛び乗った。


     眼前一メートル距離に少年を発見。
     背中を向けている。
     絶好のチャンスだ。
     バールを振り上げ飛び上がり、脚めがけて叩き付け――ようとした寸前。
    「あは」
     黒白は素早く振り返り、鎌鼬の頭を踏みつけた。
     ロッドを突き出す。
    「釣れた釣れた」
     子供のように笑う。マジックミサイル乱射。
     大量の魔矢が鎌鼬を貫通していく。
     跳ね上がって踊る鎌鼬に、さらなるスイング加える。
     野球ボールの如く棚を越えて飛んでいく鎌鼬。
     鎌鼬は地面にたどり着くこと無く空中でかすんで消えた。
     黒白の圧勝である。とはいえここは鎌鼬の巣。物音を聞きつけた鎌鼬の群れが一斉に集まり、棚の上や通路の角から次々に飛び出してくる。
     前後双方挟み撃ち。あわやと思われたその時、棚の向こう側から『からからがちり』という音がした。
     直後。棚が爆発した。
     より正確に述べるなら、棚の向こう側から巨大なカラクリ腕が飛び出し、かまいたちの一匹を掴んだかと思うと棚ごと爆破したのだ。
    「残念だけど、読んでたよ」
     吹き飛んでいくカマやらシャベルやらの庭道具。そして鎌鼬。
     ひしゃげた棚から夜姫が身を乗り出し、異形化した腕で鎌鼬を薙ぎ払うと、黒白の前に立ち塞がる。
     こうなれば反対側から攻めようと考えた鎌鼬。しかし飛び出してきたのは夜姫だけではない。身体に軽装甲を着けた姫月が滑り込み、空中を舞うシャベルをキャッチ。
    「使われず朽ちるのは無念であろうよ。ならばせめて――!」
     ぐるんと身体ごと回転するとシャベルを鎌鼬に叩き付けた。へし折れるシャベル。地面に叩き付けられる鎌鼬。人ひとり殺せるような凶器であっても灼滅者の腕力で使えばこんなものである。
     姫月は笑って柄を投げ捨てると、同じく宙を舞っていた物干し竿をキャッチ。棒術の要領でぐるぐる回し、飛びかかってくる鎌鼬の群れを薙ぎ払った。
    「我が使おう、刹那の輝きだとしても」
     黒白を挟んで身構える夜姫と姫月。
     一拍遅れて、足下の板をどけて頭を出す鎌鼬。
     右を見て左を見て。
    「えいっ」
     フィオルに頭を蹴っ飛ばされて床下へ戻っていった。
     振り向くフィオル。
     通路の床板が次々に外れ、同じように鎌鼬が這い出してくる。
    「まるでモグラ叩きだね。シーザー!」
     フィオルがカードを翳すやいなや、架空のカタパルトから霊犬シーザーが飛び出した。
    「疾風のように駆け抜けろ!」
    「――!」
     シーザーはブレードを展開。霊力スラスターを点火。暴風を纏って鎌鼬の間を駆け、次々に切り裂いていった。
     爪を出してブレーキ。地面を削りながら180度ターンし、フィオルへと向き直る。
     フィオルは満足げに指を立てた。

     一方その頃。
     織玻と歌護女は静かに木工エリアを歩いていた。
     さび付いたのこぎりや腐りかかった木材が並ぶ中を、まるで廃墟観光にでも来たかのようにゆうゆうとである。
     その後ろをぽてぽてとついて歩く霊犬豆大福。
    「ホームセンターと言えばゾンビなのにねえ。なんで鎌鼬なんだろ」
    「全く逆のことを彼らも思っているのでは? 鎌鼬といえば鎌ですから」
    「そんなものかなー」
     両手を組んでぐっと伸ばす織玻。
     二人の通り過ぎたノコギリのうち一本が、むくりと、しかしこっそりと動きだす。
     そう、これはノコギリに見せかけた鎌鼬の腕なのだ。
     歌護女が完全に通り過ぎたのを見計らって身体を露出。黒髪越しにある彼女の首めがけ、思い切りノコギリを繰り出――そうとした段階で、腕が何かに掴まれていることにようやく気づいた。
     腕。それも影業の腕である。
     腕は更に増え、鎌鼬の首や足を次々と拘束。叩き付けるような勢いで床に組み伏せられる。
    「『なぜ分かったのだろう』……と思いましたか?」
     ゆっくりと振り返る歌護女。
     鎌鼬は歯噛みし、甲高く鳴き声をあげた。
     棚を越えて大量の鎌鼬が飛び込んでくる。
     頭上を覆うほどの物量だがしかし、空を割くかの如く放たれた大量の鋼糸が彼らをはじき飛ばした。
     素早く糸を引き戻す織玻。
    「やっぱり数に頼っちゃったかー。しょうがないよね。豆大福、やっちゃって」
    「ムゥッ」
     豆大福はぴょんと前足を上げて二本足姿勢になると、頭上めがけて六文銭を乱射。
     ひとたび鎌鼬を牽制すると、織玻たちを案内するように通路の先へとダッシュ。
     ……と思いきや、豆大福は慌ててブレーキ。止まりきれずにぽてんと転がる豆大福のその先には、鎌鼬がずらりと並んでいた。
     更に天井の穴からぼろぼろと落ちてきては陣形を広げ、二人を囲みにかかる。
     なんと罠にかかってしまった!
    「……と、みせかけてェ!」
     頑丈な棚の上で立ち上がる漣香。ガトリングガンをどこからともなく引っ張り出すと、ずらりと広がった鎌鼬の群れへと突きつけた。
    「よーしよしガトリングちゃん、今日は暴れていいんだってよ」
     思わず両手を挙げる鎌鼬の群れ。
     漣香はウィンクすると、右から左へ乱射した。
    「そーら、蜂の巣だぁ!」
     次から次へとはじけ飛んでいく鎌鼬。
     そんな中で幸運にも生き残った鎌鼬は、頭を庇っていた両手をはなしてきょろきょろとした。
     でもって、棚のうえに腰掛ける煉(ビハインド)と視線が合った。
     手を翳して霊障波を一発。
     ぺこんとひっくり返る鎌鼬。
     煉はぴょんと地面に飛び降りた。鎌鼬の残骸をつぶし、まとまった髪を一度大きく払う。
     すると、次から次へと飛び出してくる鎌鼬めがけて飛び込んでいった。
    「楽しそうだなあ。ヒクわぁ」
    「あれ、鎌鼬ぜんぶ倒しちゃったの?」
     後ろから顔を出した燐花が残念そうに頬をかいた。
    「出番なくなっちゃったかなあ」
    「いえ、そうでもありませんよ」
     番傘を開く歌護女。
     直後、周囲の棚に並んでいた工具の数々が一斉に飛び出してきた。
     いやちがう。工具に扮していた鎌鼬である。
    「そうこなくっちゃね!」
     燐花はにっこり笑って手袋を嵌めると、それをそのまま地面に押し当てた。
     放射状に走る紫電。燐花たちを中心に円を描くと、結界となって一斉発火。飛びかかってくる鎌鼬の群れに直撃し、飛んでくるそばからばたばたと地面に転がっていった。
     燐花は指先についた火を吹き消して。
    「って、派手にやり過ぎちゃったかな」
     小首を傾げて見せた。


     黒白たちは倉庫内を歩いていた。
     ホームセンターの倉庫というやつは案外広いもので、土地によっては軽くテニスができそうなスペースがあったりする。
     が、在庫を抱えまくった店の倉庫だけあってそこら中が段ボールだらけで通り抜けるだけでも苦労した。
    「これなんてまだ使えそうなのにのう。勿体ない」
     段ボールからスパナをじゃらじゃら取り出してみる姫月。
    「特にこれなんか新品同然で」
     引っ張り上げたスパナ……に、鎌鼬がくっついていた。
     暫く見つめ合う一人と一匹。
    「わひゃあ!?」
    「キュイイ!?」
     鎌鼬を放り投げる。
     と同時に、周囲の段ボールからネジ締め工具やら穴開け工具やらが突き出し、姫月へと襲いかかる。
    「どいて……」
     姫月を一旦突き飛ばすと、夜姫はカラクリ腕から祭壇装置を露出。周囲に強制結界を展開し、突き出た工具類を全てへし折った。
     スパナを握り、炎を纏わせる姫月。
     手近な鎌鼬に思い切り叩き付けると、衝撃でへし折れたスパナを捨てた。
    「ふう……しかしお主、女だてらに随分男らしい戦いっぷりじゃのう」
    「えっ?」
    「えっ?」
     二人は顔を見合わせ、暫く沈黙したあと、ぺふんとお互いの胸に手を当てて。
    「「……ほう」」
     何か納得した顔で頷き会った。

     丁度その頃、煉(ビハインド)はスタッフルームの中を跳ね回っていた。
     あまり広い部屋ではないが隠れる場所は多いようで、そこら中からもりもり鎌鼬が沸いてくる……のだが、沸いたそばから煉が首をはねていくという嫌なモグラ叩き状態となっていた。
    「うーん、ヒクわぁ」
    「あらそうですか? 楽しそうじゃありませんか」
    「いやだからなんだけ……ど、ね」
     口に手を当てて笑う歌護女。
     その表情を見て漣香はぞっとした。
     いや、少しも変な表情ではない。強いて言うなら姉の笑い方にそっくりだっただけだが……ここで感じたのは『わあい姉ちゃんにそっくりー』ではない。つい十分前まで燐花そっくりの笑い方をしていた筈が、急に笑い方が変わったのである。まるで仮面でも付け替えたかのようにだ。
    「いや、気のせい気のせい」
    「どうか?」
    「いや、いやいや」
     漣香は咳払いすると、羽織っていた布を展開。ぽーんとはねられた鎌鼬を次々に捕まえると、自分のほうへと引っ張り込む。
    「こっち頼んでいーい?」
    「ええ、よろこんで」
     歌護女は飛んでくる鎌鼬の中を、まるで雨をしのぐように番傘をさして通り抜ける。
     すると、傘の裏からはらはらと落ちた護符がひとりで鎌鼬に張り付き、ぼとぼとと崩れ落ちていった。
    「これで、よろしいでしょうか?」
     振り返って笑う歌護女。彼女の笑い方は、なぜか織玻のそれにそっくりだった。
     漣香は笑って指を立てた。
    「いーんじゃね?」

     いっぽーそのころ。
    「うりゃっ!」
     回転しながら飛んでくるハンマー鎌鼬を、燐花はエアシューズでもって蹴りとばした。
     と思ったら、スネのところにハンマーがヒット。燐花は『はにゃあ』と『うぎゃあ』の中間くらいの声をあげてうずくまった。
    「い、いたたたた……武器払いってムズカシー……」
     そばによってくる織玻。
    「大丈夫!?」
    「だいじょぶ、スネを金属ハンマーで強打しただけだから」
    「拷問かなにかかな?」
     手袋から祭霊光を出しつつふーふーする燐花。
     とかなんとかやっていると、霊犬豆大福がきゅんきゅんと鳴きだした。
     見ると、豆大福が壁をかりかりひっかいている。
    「どうしたの。気になるの?」
     振り返って目で訴えてくるので、織玻は壁に近づいてみた。
     壁に触れてみて分かったが、どうもこの部分だけ素材が新しい。
    「豆大福、下がって下がって」
     織玻はせーので異形化した拳を握り込み、壁へと叩き付ける。
     砕けて吹き飛ぶ壁。
     そしてその向こうには。
    「あ、どうも」
     チェーンソー腕の鎌鼬に押し倒された黒白が、苦笑いで寝転んでいた。
     ぎろりとこちらをにらみ付ける鎌鼬。
    「くらえ、すねのうらみっ!」
     ――を、燐花は豪快なキックでシュートした。
     回転しながら吹っ飛んでいく鎌鼬。
     そいつを追いかけて部屋へ入り、燐花と織玻は目を丸くした。
     部屋はコンクリート壁による六角形構造になっていて、それぞれの壁際に鉄の檻が置かれている。ホームセンターにあるっちゃああるかもしれないが、大型犬なんかを閉じ込める頑丈な折である。
     その中に、腕がチェーンソーや電動ドリルになった鎌鼬が入っていた。そいつらが檻を自らの腕で破壊し、外へ出てくるではないか。
     前後左右から飛びかかってくる電工鎌鼬。
     そこへ。
    「シーザー!」
     霊力放射で加速した霊犬シーザーが突っ込み、鎌鼬をかっさらっていく。
     反対側からは豆大福がダッシュジャンプ。別の鎌鼬をかっさらっていった。
     遅れて天井から飛び降りてくるフィオル。
    「どうしたの、こんなところで」
    「いやあ、変な通路を見つけて潜ってみたらこう……」
    「話は後。こいつらやっつけちゃおう!」
     織玻は手刀を構えると、鎌鼬めがけて神薙刃を放った。
     顔面を切り裂く真空の刃。
     それを強引に抜けて、織玻に襲いかかる鎌鼬。
     電動ドリルが突き出され、織玻の顔面に迫った。
     ギリギリの所で押さえつける織玻。眼球から五センチの位置で高速回転するドリル。
     起き上がって駆け出す黒白。
    「援護を!」
    「風よ、みんなを護って!」
     フィオルが腕を振り上げると、激しい風が巻き起こった。黒白の肩についたチェーンソーの傷跡がみるみる癒える。ぐるんと肩を回すと、黒白はドリル腕の鎌鼬めがけて氷の杭を投擲した。
     杭は鎌鼬を貫通。血を吐いて崩れ落ちる鎌鼬。
    「ふう、なんとかなったねえ」
     黒白は額の汗をぬぐった。
    「連絡よろしくね」
    「ん、りょーかい」
     フィオルは携帯電話を取りだし……圏外表示を見て、無言で天井を見上げた。

     それからしばらく。
     後片付けもほっといて、彼らは建物の外に出た。
     置いていた荷物を持ってさあ帰ろうとしたところで。
    「あのー、このホームセンターって、やってますか?」
     毛根の死に絶えたおっさんが話しかけてきた。
    「……」
    「……」
     顔を見合わせる夜姫と漣香。
    「見ての通り……」
    「廃墟ナウ」
    「そっかあ」
     おっさんは頭をなで、きびすを返して去って行く。
     再び顔を見合わせて、彼らは肩をすくめた。

    作者:空白革命 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年5月22日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 6
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